
くるみ歯科こども歯科クリニック
院長 竹中 純子
今回は、「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」と「歯周病」という、一見すると関連が薄いように思われる二つの病気の関係性について、詳しく解説していきたいと思います。
「骨がもろくなる病気が、どうしてお口の病気と関係あるの?」
そう思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、骨粗鬆症と歯周病には、骨という共通のキーワードがあり、密接な関わりがあることが近年の研究で明らかになってきています。
今回は、その驚くべき関連性と、歯科医院として皆様にできること、そしてご自身でできる予防策について、専門的な知識を交えながら、分かりやすく丁寧にお伝えしていきます。
1.骨粗鬆症とは?静かに進行する骨の病気

まず、骨粗鬆症とはどのような病気なのでしょうか?骨粗鬆症は、骨の密度が低下し、骨がもろくスカスカになることで、骨折しやすくなる病気です。特に、閉経後の女性や高齢の方に多く見られます。
骨粗鬆症は、初期にはほとんど自覚症状がないため、「silent disease(静かなる病)」とも呼ばれています。しかし、気づかないうちに骨の強度が低下し、ちょっとした転倒や衝撃で骨折してしまうことがあります。特に、背骨、太ももの付け根(大腿骨頸部)、手首などに骨折が起こりやすく、寝たきりの原因となることもあります。
一方、歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)を破壊していく病気です。こちらも初期には自覚症状が少ないため、進行に気づきにくいのが特徴です。
歯周病が進行すると、歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯がグラグラするなどの症状が現れ、最終的には歯を失ってしまうこともあります。歯周病は、日本人の成人の多くがかかっている、またはその予備軍であると言われています。
2.骨粗鬆症と歯周病の意外な共通点

一見異なるように見える骨粗鬆症と歯周病ですが、実は「骨」という共通のキーワードで深く結びついています。
骨粗鬆症は全身の骨密度を低下させる病気ですが、顎の骨(歯槽骨)も例外ではありません。顎の骨密度が低下すると、歯周病によって歯を支える骨が溶けやすくなり、歯周病の進行を加速させる可能性があります。
・炎症性物質の関与
骨粗鬆症と歯周病は、どちらも炎症性物質が病気の進行に関与していると考えられています。骨粗鬆症では、骨吸収を促進する炎症性物質が、骨密度の低下を引き起こします。一方、歯周病では、歯周病菌が産生する毒素によって炎症が起こり、歯槽骨の破壊が進みます。これらの炎症性物質は、互いに影響を及ぼし合う可能性が指摘されています。
・カルシウム代謝の異常
骨粗鬆症は、カルシウム代謝の異常が原因の一つとされています。カルシウムは歯や骨の主成分であり、その代謝異常は歯周病の進行にも影響を与える可能性があります。
3.研究で明らかになってきた骨粗鬆症と歯周病の関連性

近年の研究では、骨粗鬆症と歯周病の間には、以下のような関連性が示唆されています。
全身の骨密度が低い骨粗鬆症の方は、顎の骨密度も低い傾向にあり、歯周病によって歯槽骨がより早く失われる可能性があります。
・歯周病が骨粗鬆症のリスクを高める可能性
歯周病による慢性的な炎症が全身に影響を与え、骨粗鬆症の発症や進行に関与する可能性が研究されています。
・骨粗鬆症治療薬と顎骨壊死のリスク
一部の骨粗鬆症治療薬(ビスフォスフォネート製剤など)は、まれに顎骨壊死という副作用を引き起こすことがあります。これは、歯科治療(抜歯など)後に起こることが報告されており、歯科医師との連携が重要となります。
4.歯科医院でできること

このように、骨粗鬆症と歯周病は密接に関連している可能性があるため、歯科医院としても様々な面から皆様の健康をサポートすることができます。
骨粗鬆症の既往歴や治療状況、服用中のお薬などを詳しくお伺いし、歯周病治療のリスクを評価します。
・口腔内検査による骨密度の間接的な評価
歯周病の進行度合いや歯槽骨の状態を詳しく検査することで、間接的に骨密度の低下を疑うことがあります。
・歯周病の適切な治療と管理
歯周病の進行を食い止め、歯槽骨の破壊を最小限に抑えるための適切な治療を行います。
・骨粗鬆症治療薬服用患者様への配慮
骨粗鬆症の治療薬を服用されている患者様に対しては、抜歯などの外科処置を行う際に、顎骨壊死のリスクを考慮した慎重な対応を行います。内科医との連携も重要となります。
・予防指導
適切な歯磨きの方法や生活習慣の改善指導を通じて、歯周病の予防をサポートします。バランスの取れた食事や適度な運動は、骨粗鬆症の予防にも繋がります。
5.ご自身でできること

骨粗鬆症と歯周病の両方を予防するためには、ご自身の生活習慣を見直すことが大切です。
歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使い、歯と歯の間や歯周ポケットの汚れを丁寧に落としましょう。
・バランスの取れた食事
カルシウムやビタミンDなど、骨や歯の健康に必要な栄養素を積極的に摂取しましょう。
・適度な運動
骨に適切な刺激を与える運動は、骨密度の維持に役立ちます。
・禁煙
喫煙は、歯周病だけでなく骨粗鬆症のリスクも高めます。
・定期的な歯科検診
症状がなくても、定期的に歯科医院を受診し、歯周病のチェックやクリーニングを受けましょう。骨粗鬆症の疑いがある場合は、内科への受診をおすすめすることもあります。
・内科との連携
骨粗鬆症と診断された場合は、歯科医師にもその旨を伝え、連携を取りながら治療を進めていくことが大切です。
くるみ歯科こども歯科クリニックは、愛知県長久手市にある、女性院長と7名の女医が在籍する、地域に根差した歯科医院です。私たちは、患者様一人ひとりのお口の健康状態だけでなく、全身の健康状態にも配慮した診療を心がけています。
骨粗鬆症と歯周病は、どちらも早期発見と適切な管理が非常に重要です。「もしかして…」と感じたら、お気軽にご相談ください。内科とも連携を取りながら、皆様の健康な毎日をサポートさせていただきます。
骨粗鬆症の治療を受けられている方、これから骨粗鬆症の治療を開始される方は必ず担当の歯科医師または歯科衛生士にご相談下さい。
他にも何かお口のことでお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。皆様のご来院を心よりお待ちしております。
- 院長:竹中 純子
- 住所:〒480-1135 愛知県長久手市下山3-1
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