
くるみ歯科こども歯科クリニック
院長 竹中 純子
今回は、「認知症」と「歯周病」という、一見すると関連がないように思われる二つの病気の、実は深く結びついた関係性について、最新の研究に基づきながら、分かりやすく丁寧にお伝えしていきたいと思います。
「え、認知症がお口の病気と関係あるの?」
そう驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、近年の研究では、歯周病が認知症の発症や進行に影響を与える可能性が示唆されているのです。今回は、その驚くべき関連性と、歯科医院として皆様にできること、そしてご自身でできる予防策について、専門的な知識を交えながら、親しみやすい言葉でご紹介していきます。
1.認知症とは?脳の機能が低下する病気

まず、認知症とはどのような病気なのでしょうか?認知症は、様々な原因によって脳の神経細胞が死滅したり、機能が低下したりすることで、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたすようになる病気の総称です。
認知症には、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症など、様々な種類があります。中でも最も多いのがアルツハイマー病で、脳内に特殊なタンパク質が蓄積することで、脳の神経細胞が 死滅していくと考えられています。
一方、歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)を破壊していく病気です。こちらも初期には自覚症状が少ないため、進行に気づきにくいのが特徴です。
歯周病が進行すると、歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯がグラグラするなどの症状が現れ、最終的には歯を失ってしまうこともあります。歯周病は、日本人の成人の多くがかかっている、またはその予備軍であると言われています。
2.認知症と歯周病、意外な接点

一見すると全く異なる病気のように思える認知症と歯周病ですが、実はいくつかの点で接点があることが分かってきています。
認知症と歯周病は、どちらも炎症性物質が病気の進行に関与していると考えられています。認知症、特にアルツハイマー病では、脳内の慢性的な炎症が神経細胞の死滅を促進するとされています。一方、歯周病では、歯周病菌が産生する毒素によって歯ぐきに炎症が起こり、その炎症性物質が血液を通じて全身に運ばれる可能性があります。
・細菌の直接的な影響
近年の研究では、歯周病菌の一部が血液脳関門を通過して脳内に侵入し、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパク質の蓄積を促す可能性が指摘されています。
・咀嚼機能の低下
歯周病が進行し、歯を失ってしまうと充分に噛むことができなくなり、脳への刺激が減少する可能性があります。咀嚼は、脳の活性化に重要な役割を果たしていると考えられています。
3.最新の研究で明らかになってきた関連性

近年の研究では、認知症と歯周病の関連性について、以下のような報告がされています。
複数の疫学研究で、歯周病にかかっている人は、そうでない人に比べて認知症、特にアルツハイマー病を発症するリスクが高い傾向にあることが報告されています。
・歯周病の進行が認知症の進行を早める可能性
歯周病による慢性的な炎症が全身に影響を与え、認知症の進行を加速させる可能性が研究されています。
・口腔ケアの重要性
適切な口腔ケアを行うことで、歯周病の進行を抑え、認知症の発症リスクを低減できる可能性が示唆されています。
ただし、これらの研究はまだ関連性を示唆するものであり、直接的な因果関係が完全に証明されているわけではありません。しかし、お口の健康が全身の健康、ひいては脳の健康にも影響を与える可能性は十分に考えられます。
4.歯科医院としてできること

認知症と歯周病の関連性が注目されている今、歯科医院としても様々な面から皆様の健康をサポートしていくことが重要だと考えています。
患者様のお口の状態を詳しく検査し、歯周病のリスクだけでなく、認知症のリスクについても考慮したアドバイスを行います。 歯周病の早期発見と適切な治療: 歯周病の進行を食い止め、炎症を抑えるための適切な治療を行います。
・口腔ケア指導
患者様やご家族に対して、適切な歯磨きの方法や口腔ケアの重要性について丁寧に指導いたします。 咀嚼機能の維持・改善: 歯を失ってしまった方には、入れ歯やインプラントなどの治療を通じて、咀嚼機能の回復をサポートします。
・多職種連携
必要に応じて、内科医や神経内科医、ケアマネージャーなどと連携し、包括的なサポート体制を構築していきます。
5.ご自身でできること

認知症と歯周病のリスクを低減するためには、ご自身でできることもたくさんあります。
・丁寧な歯磨きと口腔ケア
毎食後と寝る前の丁寧な歯磨きはもちろん、歯間ブラシやデンタルフロスを活用し、お口の中を清潔に保ちましょう。
・定期的な歯科検診とクリーニング
症状がなくても、3〜6ヶ月に一度は歯科医院を受診し、プロによるチェックと専門的なクリーニングを受けましょう。
・バランスの取れた食事
脳と体の健康維持に不可欠な栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。
・適度な運動
全身の血流を促進し、脳の活性化にも繋がる適度な運動を習慣にしましょう。
・禁煙
喫煙は、歯周病だけでなく認知症のリスクも高める可能性があります。
・知的活動やコミュニケーション
脳を活性化させるような知的活動や、人との交流を積極的に行うことも、認知症予防に繋がると言われています。
くるみ歯科こども歯科クリニックは、愛知県長久手市にある、女性院長と7名の女医が在籍する、地域に根差した歯科医院です。私たちは、患者様一人ひとりのお口の健康状態だけでなく、全身の健康状態、そしてQuality of Lifeの向上をサポートしたいと考えています。
認知症と歯周病の関連性は、決して他人事ではありません。早期発見と適切なケアによって、 認知症のリスクを低減できる可能性があります。お口のことで気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。皆様の笑顔と健康を守るために、スタッフ一同、精一杯努めてまいります。
- 院長:竹中 純子
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