
くるみ歯科こども歯科クリニック
院長 竹中 純子
大人の口の中には、虫歯(う蝕)の原因菌をはじめとして数百種類の細菌がいます。
お子さんの歯が生えて離乳食が始まる頃になると、
「親が使ったスプーンやお皿、コップなどを共有すると、赤ちゃんに虫歯菌が移る」
という情報を耳にしたことのある人も多いのではないでしょうか?
ところが2023年に日本口腔衛生学会が、「食器を共有しないことが、子どもの虫歯予防になるという科学的根拠は必ずしも強くない」という声明を発表し、話題となりました。
この記事では、お子様の虫歯がどのようにして親御さんから感染するのか、そのメカニズムや具体的な感染経路、そして最も重要な予防策について、専門的な知識を分かりやすく解説いたします。
お子様の健やかな笑顔を守るために、ぜひ最後までお読みください。
1.子供の虫歯はなぜできる?

まず、虫歯ができる基本的なメカニズムについて簡単にご説明しましょう。
お口の中には、様々な細菌が常に存在しています。その中に、糖分を栄養源として酸を作り出す「ミュータンス菌」と呼ばれる細菌がいます。
この酸が歯の表面のエナメル質を溶かすことで、虫歯が始まるのです。
お子様のお口の中には、生まれたばかりの頃にはミュータンス菌はほとんど存在しません。
では、一体どこからやってくるのでしょうか?
多くの場合、お子様の口の中に最初にミュータンス菌を持ち込むのは、周りの人たちです。
母子感染は全体の約40%程度 • アメリカ・アラバマ州の研究では、母親由来のミュータンス菌(MS)は約41%の母子で一致し、残りの59%では母親とは異なる菌株が検出されています 。
家庭外(父・きょうだい・保育園など)からの感染が主体 • 同研究では、74%の子どもで母親以外からの菌株が見つかっており、非母子由来の感染が多数を占めるとされています 。同年代・同じ世代間の感染も明確に認められており、家族内・保育園内など複数の経路が注目されています 。
食器の共有など垂直感染予防行動のみでは、必ずしも子どもの虫歯発症を有意に減少させるとは限らないという報告もあり、家庭内で食器の共有などを気を付けるより、周りの方が自身が口腔衛生管理や定期的な歯科受診など、お口の中のケアをしっかりすることが重要です。
2.なぜ生まれたばかりの赤ちゃんは虫歯菌を持っていないの?

赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいる間は無菌状態に近いと言われています。生まれて初めて外界と接触する際に、様々な細菌に触れることになりますが、ミュータンス菌もその一つです。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中は、まだミュータンス菌が定着しにくい環境です。歯が生え揃っていないことや、唾液の性質などが影響していると考えられています。
一度お子様のお口の中にミュータンス菌が定着してしまうと、完全に排除することは難しいと言われています。しかし、菌の数をコントロールし、お口の中の環境を整えることで、虫歯の進行を抑えることは可能です。
大切なのは感染してしまったとしても、菌を増やさないように適切なケアを続けることです。
3.親御さんができる!子供の虫歯を防ぐための具体的な対策

では、親御さんはどのようにして大切なお子様を虫歯菌の感染から守ることができるのでしょうか?具体的な対策をいくつかご紹介いたします。
お子様の歯が生え始めたら、定期的に歯科医院を受診し、専門家によるチェックやアドバイスを受けることが大切です。早期に虫歯を発見し、適切な治療や予防を行うことで、虫歯の進行を防ぐことができます。
2.親御さん自身の口腔ケアを徹底する
親御さんのお口の中に虫歯菌が多いと、お子様への感染リスクも高まります。毎日の丁寧な歯磨きはもちろん、定期的な歯科検診やクリーニングを受け、お口の中の環境を清潔に保つことが非常に重要です。
3.妊娠中からのケアも大切
妊娠中のお母さんのお口の中の環境は、生まれてくる赤ちゃんへの影響も少なからずあります。妊娠中からしっかりと口腔ケアを行い、虫歯や歯周病を予防することが、結果的に赤ちゃんへの感染リスクを減らすことにも繋がります。
4.離乳食の与え方に注意する
離乳食を始める時期や、与える食品の種類、与え方なども、お子様の口腔内の細菌バランスに影響を与える可能性があります。甘いものばかりを与えない、時間を決めて食事をするなど、規則正しい食生活を心がけましょう。
5.フッ化物配合歯磨き粉の使用
お子様の歯が生え始めたら、フッ化物配合の歯磨き粉を使用することをおすすめします。フッ化物には、歯の再石灰化を促し、虫歯の進行を抑制する効果があります。
4.もし虫歯ができてしまったら…

もしお子様の歯に虫歯ができてしまった場合は、決して自己判断せずに、早めに歯科医院を受診してください。初期の虫歯であれば、進行を抑えるための治療や予防処置を行うことができます。
放置してしまうと、虫歯はどんどん進行し、痛みが出たり、歯を失ってしまう可能性もあります。また、重度の虫歯は、お子様の成長や全身の健康にも悪影響を及ぼすことがあります。
くるみ歯科では、お子様一人ひとりの成長に合わせた丁寧な診療を心がけております。女性院長をはじめ、子育て経験のある女性歯科医師も多数在籍しており、お子様や親御さんの不安な気持ちに寄り添いながら、安心して治療を受けていただける環境を整えております。
また、虫歯予防にも力を入れており、フッ化物塗布やシーラントなどの予防処置はもちろん、保護者の方へのブラッシング指導や、離乳食に関するアドバイスなども行っております。
「うちの子の歯、何か気になるな…」「虫歯予防についてもっと詳しく知りたい」など、どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。皆様とご家族の笑顔を守るために、精一杯サポートさせていただきます。
- 院長:竹中 純子
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